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ディープ・ソウル・シンガーLEOの音楽日記
Sam Dees & Bettye Swann
 うっふっふっふ…。笑いが止まりません。ついに、いとしのBettye Swann様がSam Deesとデュエットしているシングル盤を見つけてしまいました !

■Storybook Children / Just As Sure [ Big Tree (1976) ]

 ずうっと探してたものですから、5,000円オーバーという価格ながら即買いでした。これしき、1〜2回の外食と思えばずっと価値ありです。といいながら、あまりの英断(?)にまだちょっとドキドキしていますが。

 このシングル盤はちょうど、彼女が1973〜1976年にAtlanticでシングルを出していた時期の合間にBig Treeからポツンと1枚リリースされている。そして、私としては初めて聴くBettye様のデュエット物でもある。企画物かもしれない。Sam Deesと組んでいるので(彼のプロデュースなのかどんな企画なのかは知らないけれど)、ややポップというか、当時の“売れ線”を狙ったような曲なのだが、それでも、彼女の独特の夢の中を漂うような吐息シンガーとしての特徴はかなりくっきり出ている。いつ聴いても実に個性的な声である。

bettye_s1.jpg 曲としては、Storybook Childrenの方がお気に入り。曲調はちょっと違うが、Atlantic時代のTill I Get It Rightの歌い節とちょっと似ている印象。『なぜ、私たち、おとぎ話の中の子供たちのようになれないのかしら ? 』という甘くせつない歌で、デュエット曲としてはありがちだが良いテーマ。ほどよく甘く軽快に仕上がっているが、どのくらい売れたのかしら。Sam Deesの歌も、ちょこちょこAl Greenにそっくりな所があったりして、これもちょっと発見だった。なかなかやるじゃん(Sam Deesのファンの方、ゴメンナサイ)。

bettye_s2.jpg
 もう1曲のJust As SureはBarbara Acklin作となっている。ディスコ調、というのかなぁ。個人的にはちょっと無縁なアレンジと曲調だが、この歌のミソは、最後の方に出てくるBettye様の珍しいtalk部分。歌っているときは、ファルセット気味の、どちらかといえば高めでビブラートする声なのに、talkの声は低い ! まさかこんなに低い声で、『ヘイ、ベイビイ…』なんておっしゃる方とは想像もしていませんでした。この部分だけは、むしろ他のディープな女性ソウル・シンガーが、ちょっと抑え目にセクシーに語るのと似ていて、ここだけ切り出されたら私にもBettye様とはわかりません。新・発・見でしたっ !

 今週は忙しくて、こんなことしてる場合じゃないのに ( ! )、ついつい嬉しくなってクスクスひとり笑いしながら何度も聴いています。至福です。
Irma Thomas のKENTコンピ
  Irma Thamas っていう人は、本当にコンピレーション盤(いわゆるベスト盤としての再編集もの)の多い人だ。少なくとも私の棚には、10数枚のオリジナル・アルバムに対して、"Irma Thomas"コンピ盤が同数以上並んでいる。そのほとんどが、初期のMinit/Imperial時代のNew Orleansでの曲、つまり、Time Is On My SideとかIt's Raing、Ruler of My Heartなどの曲を中心にしたもの。一体、どれに何の曲が入ってて、どれと重複してるやら、さすがに憶えきれず毎回混乱するので、ついに全アルバムに含まれる曲の一覧表を作ったぐらいである。もちろん、彼女の大ファンである私としては、コンピ盤とはいえ、たとえ、ジャケ写真が違うだけでも買わないけにはいかないし、“previously unissued (未発表曲)”の文字にも弱い。ましてや、今回は信頼のKENTさんからの編集物、ということで、中身あらためずに速攻ゲットの次第と相成った。もちろん、未発表曲アリだし。

■A WOMAN'S VIEWPOINT / Irma Thomas (2006)

 このコンピは、珍しく IN BETWEEN TEARS (Fungs 1973)SAFE WITH ME (RCS 1979) を中心に選曲したラインナップ。つまり、Irmaが1970年代にニューオリンズを出て、“ソウル・シンガー”への転身を図った時期のもの。この時代については、彼女は残念ながらあまり良い印象を持たなかったらしく、やがてもとの古巣ニューオリンズに戻るのだが、この時期をはさんで、彼女のアルバムはガラッと変化している。つまり、主にAllen Toussainの曲を(彼のプロデュースのもとに)ニューオリンズのミュージシャンのバックで歌っていた時代から巣立った、とでも言おうか。以後、有名ソウル曲のカバーも増えたりして、現在のスタイルに続いている。

 この時代のアルバムというのは、実は、それまで抱いていたIrma Thomasに対するイメージとは違う気がして、正直、これまでそんなに熱心に聴いていなかった。でも、今になって、彼女が辿って来た歌の変化の大きな流れを知った上で改めて聴いてみると、逆にすごく貴重な時代だったのかも、と思えるようになってきた。ソウル・アルバム、といえば、彼女にはそれ以前にも有名なChessでのレコーディングがあるが、私としては、あのアルバムはよい曲が揃ってはいるものの、まだ何だか“借りてきた猫”状態の彼女のような気がしている。それに比べると、この'70年代は、それ以前のストレートではつらつとはしているがこころもち青い歌とも違うし、それ以降現在にいたるQueen of New Orleansとしてのびのびと大らかに人々を惹きつけていく歌とも違う、いかにも若いサザン・ソウル・シンガーがチャレンジしてるような感じなのである。この“彼女らしくない”ザザン・ソウルっぽさが気になってしまって、この1週間、何度となく聴き返している。そして ニューオリンズのIrmaとは違う“サザン・ソウル・シンガー”としてのテンションの高いIrmaもまた再評価したい気持ちになっている。


IN BETWEEN TEARS (1973)TURN AROUND THE WORLD (1993)
 #1〜#7は、Jerry Williams, Jr.(Swamp Dogg)のプロデュースによるアルバム“IN BETWEEN TEARS”からの全曲、曲順も同じである。ややこしいのは、このアルバム、一度リリースされた後、後年、Swamp Dogg本人の手によって全曲の権利を買いなおされ、バック・ミュージシャンのトラックを新しいメンバーで差し替えた別バージョンによる“完成版”として、TURN MY WORLD AROUNDというタイトルで再発(?)されているのだ。この“TURN MY WORLD AROUND”には2曲の未発表曲が追加されていたが、それが今回のKENT盤の#8と#9。つまり、今回のKENT盤の#1〜#9は、収録曲からみれば、“TURN MY WORLD AROUND”と同じといえる。しかし ! サウンドが違うのである。特に、私としてはベーシストが差し替えられているのは大問題。オリジナルの“IN BETWEEN TEARS”では、全曲がRobert (Pop) Popwellなのに対し、“TURN MY WORLD AROUND”では#1と#2を除き全曲Charles Gllenという人に差し替えられて大分軽いサウンドになっている。Pop Powellのベースは音が低いと同時に、高いところでプププゥ〜ンと跳ねるリフが特徴的で、聴くたびにドキッとする。今回も、あらためてその凄さを再確認。ということで、私としては、今回のKENT盤でオリジナルのPop Powellのテイクの方が採用されているのは非常に嬉しいのだ。特にヘタをすれば単調となりがちな#6の.Coming From Behind (Monologue)なんて、彼のベースでなければ意味がない、とまで言えると思う。あ〜。このリフが頭から離れない! (とはいえ後半のWish Someone Would Careはさすがに長過ぎ ; 計12分超)。こんなにすばらしい出来なのに、Swamp Dogg がTURN MY WORLD AROUNDの発売にあたり、『IN BETWEEN TEARSは未完成な状態でリリースしなければならなかった作品で、Irma 自身もあれは“bootleg”だと言っている』とコメントしている理由が私にはさっぱりわかりません。当時、発売レーベルのFungusとよっぽど嫌なことがあったのかもしれないですが。とにかく、このサウンドあり、というところで、#1〜#7は全体的に、同じくSwamp Doggがプロデュースでほぼ同時期、同じバック・ミュージシャンによるDoris Dukeの I'M A LOSER(名盤 ! )を彷彿とさせる佳曲が並んでいる。また#9はOtis ReddingのHard To Hundleにも似た曲でかっこいい。

 #10〜#13は、このコンピ盤の目玉。IN BETWEEN TEARS以前にScepterで吹き込んだ#10(未発表)と#11、canyonでのシングル盤からの#12#13。お宝、お宝。#10#13は、Irmaの歌ならではこそ、甘くなりすぎない感じが心地よく気に入った。実は他にも、(このアルバムのタイトルになっているWoman's Viewpointなど)シングル盤でしか出ていない曲が他にもあるはずなのだ。次回はそれらもまとめて是非、何とかして下さい。Irma 自身はこの時代について多くを語りたがらないのだが、私は聴きたい !

SAFE WITH ME (1979)SAFE WITH ME + LIVE (1991)
 #14〜#19はアルバム“SAFE WITH ME”を土台にした選曲で、サウンドがぐっと洗練されてくる。このアルバムにも、1977年のバトン・ルージュのクラブKingfishでのライブ・テイクを追加した再発盤CD - SAFE WITH ME & IRMA THOMAS LIVE - が出ており、今回のKENT盤はこの再発盤を持っていればすべてカバーされる。

 SAFE WITH MEでは、IrmaはChessでのレコーディングで知り合ったスタッフたちと再会している。中でもDan Pennの手によるZero Willpowerなどは、Irma 独特の世界が作られており、私の大好きな1曲だ。この曲と#10のWoman Left Lonelyは、Dan Pennの曲ばかりを集めたMY HEART'S IN MEMEPHIS(2000 : 写真右)でも再録されているが、私は今回の古い方のテイクの方が好き。#15#18#19はかなりポップなサウンドで、当時はあまり好きではなかったが、今考えてみると続くRounder時代のサウンドに近いものかもしれない。
 #17はライブテイク(オリジナルはMaison de soul盤)。イントロで音が怪しくヨレてるが、これは前回のCDも同様なのでマスター・テープの問題らしい。また、曲の最後では中途半端なところで音が切れているが(IrmaのMC前に一旦タイコが音を〆ているところで切れば良いのに…)、これは、ライブ盤でのこの部分をそのまま切り出したため。オリジナルではこのままBreak Awayに繋がっている。彼女のライブ盤は他にIsland盤があるが、それよりも全体的にリラックスして安定している。個人的には、Island盤ライブのドサクサな感じも臨場感あって捨てがたいのであるが。

 今回は、このコンピ盤とともに、当時はリリースされていなかった別テイクなども色々聴き比べてしまい、「シンガーの個性」と「楽曲」と「サウンド・アレンジ」の関係について、色々考えてしまった。この全てがうまく組み合わさった時にのみ名曲というものができるのだな。
 ということで、この時代のIrma Thomasを聴いたことのない人には違和感があるかもしれないが、サザンソウルとして新たな耳で聴き直してみると、納得、うれしい1枚であった。
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