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アトランティック・レコード、スタックス・レコードなどで、エンジニアおよびプロデューサとして、数々のアメリカ音楽の名作を作り上げたトム・ダウドの自伝を元にした映画。
さる方のご好意により、一足お先に試写会を見せていただきました。
*3/20に一般試写会もあります。 応募はこちら↓(3/9〆切)
http://www.uplink.co.jp/news/log/001081.php
■トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男
原題: Tom Dowd & The Language Of Music
(マーク・モーマン監督/2003年/アメリカ/90分)
2006月4月1日より渋谷UPLINK Xにてロードショー。他全国順次公開。
http://www.uplink.co.jp
1925年、ニューヨークで、ソプラノ歌手の母と舞台監督の父のもとに生まれたトム・ダウドは、音楽の才能(バンドでベースおよびチューバを演奏)を示しつつも、数学・物理学の才能にも秀で、何と16歳で高校を卒業してから20歳まで、コロンビア大学で国家機密である原子爆弾製造の研究にも参加したという経歴を持っている。しかし、終戦後、復学して核物理学者の道を歩もうとした彼にとって、大学の授業レベルはあまりに低く、またかつての研究の機密性が壁になったこともあり、研究者の道を捨て、音楽業界へのキャリアを得ることになった。
1949年、アルバイトの身分ながら、アイリーン・ハートンのヒット曲『If I Knew You Are Comin'』のレコーディングにおいてエンジニアとしての手腕を発揮した所から、彼のキャリアは始まる。
その後、長いキャリアの中で彼がエンジニアまたはプロデューサーとしてレコーディングを手がけたのは、この映画で名前が挙がった人だけでも、ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマン、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンク、ティト・プエンテ、ボビー・ダーリン、ルース・ブラウン、ジョー・ターナー、レイ・チャールズ、ドリフターズ、コースターズ、クローヴァーズ、Booker T. & MG's、ルーファス・トーマス、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン、レス・ポール、クリーム、オールマン・ブラザーズ・バンド、レーナード・スキナード、エリック・クラプトンなど。ジャズからラテン、ポップス、R&B、ソウル、ロックとジャンルを問わずに実に多彩である。
映画としては、1940年代からのエピソードが、トム・ダウド自身によるナビゲーションを軸に、当時の古い写真や映像と、新たに撮影された関係者のインタビュー(1996〜2001年)とを交えて綴られる構成となっている。
彼自身のエンジニア/プロデューサーとしてのスタジオでの仕事ぶりについては、古い時代のものについては、裏方だけに残念ながら映像としては残っているものが少なかったらしい。 しかし、自らの口で語られるエピソードの数々は新鮮だし、また、その語り口によって、彼のキャラクターは十分に浮き彫りにされている。抜きん出た才能は間違いないが、ある種のクセのある感じがちょっと微妙で面白い。
彼のプロデュースぶりは、ジョー・ボナマッサのリハーサル・シーンから垣間見ることができる。トム・ダウドは、自分のカラーを前面に出すことはなく、常に、ミュージシャンの個性が最も良く引き出されるように関わったという。しかし、それは必ずしもミュージシャンの言うなりになるという姿勢ではない。また、音楽に対する好き嫌いとか感傷とかによるものでもない。この人は、音楽というものが何であるのか、実によくわかっているのだ。時にミュージシャンより上手(うわて)。しかも彼自身もそのことを知っている感じ。だから、コード・ワークにまでどんどんアドバイスしたりする。時にはミュージシャンとかなりぶつかったことが予想される。(エリック・クラプトンの回想による口ぶり…)。しかし、その結果、彼の手がけた作品の多くがヒットしたことは事実なのだから、すごい才能だ。
トム・ダウドのもつ“音楽の抽斗”が大きいことは、関わった音楽のジャンルの広さにも現れている。何しろ、コースターズ(だったか ? )のレコーディングをこなした5時間後に、難解なジャズのレコーディングをするような人だ。本人は『あまりの音楽の違いに、思わずHELPと言ったよ』と笑うが、そのどちらのレコーディングでも満足な対応ができる人だったなんて普通ではない。音楽会社から、『トミーに任せときゃ安心』と、丸ごとの信頼が与えられたのも頷ける。
そして、それらの才能を証明するように、レコーディングから30年以上経て再び、邦題タイトルともなった「いとしのレイラ」を、卓に座ってミックスしてみせるシーンは圧巻。ある瞬間に演奏された音楽を、時を越えて広く人に聴いてもらうためにレコード(あるいはCD)という媒体にまとめるにあたって、これらの“裏方”の人たちの才能がどれだけ重要なものなのかを、あらためて考えさせられる。
また、レコーディング技術の進歩を常にどんどん取り入れていく技術者としての才能もすごい。音圧に応じてレコードの幅1インチに何本の溝を刻むか、というアナログ時代のマニピュレーション・テクニックに始まり、モノラルからステレオ、多トラック録音と編集、デジタル録音、と、優秀な技術者として、テクノロジーの進歩を楽々と吸収していった様子が印象的だった。
いわゆる“音楽映画”としては、ライブ演奏シーンが少なく派手さには欠けるが、音楽を送り出す立場からは、色々考えさせられ、非常に勉強になる点が多い映画だった。
もちろん、トム・ダウドは並のプロデューサーではなかったのだとは思う。いわゆる才能の人だ。
しかし、今の音楽業界、こんなにも音楽というものが何であるのかを熟知してる人がどれだけ携わってくれてるんだろうか ?
* * * * *
挿入されている各ミュージシャンの古い演奏風景は、他ビデオなどで既出のステージ映像が多いが、中には珍しいものも。アレサ・フランクリンのレコーディング風景などは初めて見た。“彼女の良さを最大限に引き出すために” ピアノの前に座ったアレサを数人で取り囲み、あれこれブリーフィングしている(?)風景は、これまで想像していたのと全く違っていてびっくり。アレサという人がピアノを弾きながらでないとイマイチだった、という話に二度びっくり。
また、レス・ポールの演奏風景というものは初めて見ることができて、とても興味深かった。ギターの名前の人っていうことだけは知ってたんですが。惜しむらくは、この演奏についてはもうちょっと見たかったな。
さる方のご好意により、一足お先に試写会を見せていただきました。
*3/20に一般試写会もあります。 応募はこちら↓(3/9〆切)
http://www.uplink.co.jp/news/log/001081.php
■トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男
原題: Tom Dowd & The Language Of Music
(マーク・モーマン監督/2003年/アメリカ/90分)
2006月4月1日より渋谷UPLINK Xにてロードショー。他全国順次公開。
http://www.uplink.co.jp
1925年、ニューヨークで、ソプラノ歌手の母と舞台監督の父のもとに生まれたトム・ダウドは、音楽の才能(バンドでベースおよびチューバを演奏)を示しつつも、数学・物理学の才能にも秀で、何と16歳で高校を卒業してから20歳まで、コロンビア大学で国家機密である原子爆弾製造の研究にも参加したという経歴を持っている。しかし、終戦後、復学して核物理学者の道を歩もうとした彼にとって、大学の授業レベルはあまりに低く、またかつての研究の機密性が壁になったこともあり、研究者の道を捨て、音楽業界へのキャリアを得ることになった。1949年、アルバイトの身分ながら、アイリーン・ハートンのヒット曲『If I Knew You Are Comin'』のレコーディングにおいてエンジニアとしての手腕を発揮した所から、彼のキャリアは始まる。
その後、長いキャリアの中で彼がエンジニアまたはプロデューサーとしてレコーディングを手がけたのは、この映画で名前が挙がった人だけでも、ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマン、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンク、ティト・プエンテ、ボビー・ダーリン、ルース・ブラウン、ジョー・ターナー、レイ・チャールズ、ドリフターズ、コースターズ、クローヴァーズ、Booker T. & MG's、ルーファス・トーマス、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン、レス・ポール、クリーム、オールマン・ブラザーズ・バンド、レーナード・スキナード、エリック・クラプトンなど。ジャズからラテン、ポップス、R&B、ソウル、ロックとジャンルを問わずに実に多彩である。
映画としては、1940年代からのエピソードが、トム・ダウド自身によるナビゲーションを軸に、当時の古い写真や映像と、新たに撮影された関係者のインタビュー(1996〜2001年)とを交えて綴られる構成となっている。
彼自身のエンジニア/プロデューサーとしてのスタジオでの仕事ぶりについては、古い時代のものについては、裏方だけに残念ながら映像としては残っているものが少なかったらしい。 しかし、自らの口で語られるエピソードの数々は新鮮だし、また、その語り口によって、彼のキャラクターは十分に浮き彫りにされている。抜きん出た才能は間違いないが、ある種のクセのある感じがちょっと微妙で面白い。
彼のプロデュースぶりは、ジョー・ボナマッサのリハーサル・シーンから垣間見ることができる。トム・ダウドは、自分のカラーを前面に出すことはなく、常に、ミュージシャンの個性が最も良く引き出されるように関わったという。しかし、それは必ずしもミュージシャンの言うなりになるという姿勢ではない。また、音楽に対する好き嫌いとか感傷とかによるものでもない。この人は、音楽というものが何であるのか、実によくわかっているのだ。時にミュージシャンより上手(うわて)。しかも彼自身もそのことを知っている感じ。だから、コード・ワークにまでどんどんアドバイスしたりする。時にはミュージシャンとかなりぶつかったことが予想される。(エリック・クラプトンの回想による口ぶり…)。しかし、その結果、彼の手がけた作品の多くがヒットしたことは事実なのだから、すごい才能だ。
トム・ダウドのもつ“音楽の抽斗”が大きいことは、関わった音楽のジャンルの広さにも現れている。何しろ、コースターズ(だったか ? )のレコーディングをこなした5時間後に、難解なジャズのレコーディングをするような人だ。本人は『あまりの音楽の違いに、思わずHELPと言ったよ』と笑うが、そのどちらのレコーディングでも満足な対応ができる人だったなんて普通ではない。音楽会社から、『トミーに任せときゃ安心』と、丸ごとの信頼が与えられたのも頷ける。
そして、それらの才能を証明するように、レコーディングから30年以上経て再び、邦題タイトルともなった「いとしのレイラ」を、卓に座ってミックスしてみせるシーンは圧巻。ある瞬間に演奏された音楽を、時を越えて広く人に聴いてもらうためにレコード(あるいはCD)という媒体にまとめるにあたって、これらの“裏方”の人たちの才能がどれだけ重要なものなのかを、あらためて考えさせられる。また、レコーディング技術の進歩を常にどんどん取り入れていく技術者としての才能もすごい。音圧に応じてレコードの幅1インチに何本の溝を刻むか、というアナログ時代のマニピュレーション・テクニックに始まり、モノラルからステレオ、多トラック録音と編集、デジタル録音、と、優秀な技術者として、テクノロジーの進歩を楽々と吸収していった様子が印象的だった。
いわゆる“音楽映画”としては、ライブ演奏シーンが少なく派手さには欠けるが、音楽を送り出す立場からは、色々考えさせられ、非常に勉強になる点が多い映画だった。
もちろん、トム・ダウドは並のプロデューサーではなかったのだとは思う。いわゆる才能の人だ。
しかし、今の音楽業界、こんなにも音楽というものが何であるのかを熟知してる人がどれだけ携わってくれてるんだろうか ?
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挿入されている各ミュージシャンの古い演奏風景は、他ビデオなどで既出のステージ映像が多いが、中には珍しいものも。アレサ・フランクリンのレコーディング風景などは初めて見た。“彼女の良さを最大限に引き出すために” ピアノの前に座ったアレサを数人で取り囲み、あれこれブリーフィングしている(?)風景は、これまで想像していたのと全く違っていてびっくり。アレサという人がピアノを弾きながらでないとイマイチだった、という話に二度びっくり。
また、レス・ポールの演奏風景というものは初めて見ることができて、とても興味深かった。ギターの名前の人っていうことだけは知ってたんですが。惜しむらくは、この演奏についてはもうちょっと見たかったな。
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