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ディープ・ソウル・シンガーLEOの音楽日記
ザ・ワイルド・ウーマン・コンサート
wwomen.jpg 4月12日の日記でも取上げた、マキシン・ブラウン(70歳)、ビバリー・クロスビー(68歳)、エラ・ピーチズ・ギャレット(78歳) の3人の大ベテラン女性シンガーによる『ザ・ワイルド・ウーマン・コンサート』。
 事前に告知されていた予定曲目のあまりのポピュラーさに、ちょっとためらったものの、最近ではめっきりと見られなくなったソウル系のコンサート。しかも、キャリアある人たちが、こんな年齢になった今現在、どんな歌を歌うのかという興味を押さえられず、やはりここは見ておくべきだろうと、5月26日のゆうぽうと公演に行ってきた。

結論。見に行って良かったです。じんわり満足。
ポピュラーな選曲も全く気にならず。
長いこと歌い続けてきた人たちが歌う姿を生で見る価値、確かにありました。

 ホール・コンサートというものから遠ざかって何年たつだろうか。「指定席」なんて言葉も久々に思い出した(指定席って時間までに行けばいいことわかってるから楽でいいなぁ)。最近、見に行くのは、ジャズ・クラブやライブ・ハウスなど、小さい会場ばかり。ステージと客席の近さが魅力で、大音量の音圧に巻き込まれつつ音楽を聴くのが普通になっていた。それに比べると、今回のコンサートは、客観的にちょっと外から眺める感じで、最初は、『あれ ? ホールってこんなに音圧低かったかな… ? 』と思ったが、彼女たちの歌にどんどん惹き込まれて、途中からはすっかりそんなことは忘れていた。音を身体で感じて“興奮”というのとはちょっと種類違うが、それでもゆったりと楽しむことができた。

 バッキングは、ピアノ(Toya)、ベース(ジェフ・アンダーソン)、ドラム(シッポ・クネーネ)によるトリオ。フロントの3人だけでも鉄壁なハーモニーを作れるので、歌を生かすのにはこれくらいシンプルなバックでちょうどいい。
 ちなみに、事前に恐れていた“あまりにポピュラーな選曲”というのは、私の勝手な思い込み(何年か前に見た某来日ゴスペル・クワイアの“観光ゴスペル・ショー”みたいなものに辟易した経験があるので…)で、今回は、どの曲も3人のシンガーたちに合うように良い感じでアレンジされていたと思う。日本公演向けの曲目かとは思うが、今回の音楽ディレクターであるToyaさんの力だろうか。

 面白かったのは3人の歌のルーツの違いが曲ごとに明らかにわかること。大まかに言えば、エラはジャズ、ビバリーはブルース/ゴスペル(この人は持ってる声の種類が多い)、マキシンはR&B。
 曲目には、ブルース、ジャズ、R&Bなど、色々なタイプの曲(アレンジ)が散りばめられており、各曲について3人が代わる代わるソロをとったりコーラスをしたりするのだが、どの人の場合も、その人にドンピシャリの曲でソロを取った瞬間、残る他の2名からダントツに飛びぬけて、圧倒的な鮮やかさ、というかハマリ具合を見せるのだ。エラ、すごい年季です。私もこんな婆さんになりたい。ただ、強いて言えば、マキシンの歌った昔のヒットR&B曲の場合は、さすがにこの広いホールでシンプルなバッキング編成というのはちょっとかわいそうだったかも。ビデオなんかでみる昔のR&Bショーの光景などが脳裏をかすめ、R&Bという音楽はそもそも“あざといまでのショー的”なニュアンスが必要な音楽なんだなぁ、とぼんやり考えた。

 3人のハーモニーはゆるぎなく、“聴かせどころ”が極めて上手に用意されていて、シンガー3人がまたその期待を裏切らないのだ。ところどころバックのブレイクで3人だけのアカペラになった時などは鳥肌モノ。
とにかく、3人とも声に艶とハリがある。喉が荒れてなくて、ハスキーだけれども艶があるのだ。こんなお歳とは信じられないくらいで、さすが、というしかない。

 とはいえ、今回は、長丁場のツアー日程を考えてか、またはさすがにお歳ゆえのコンディションを考慮してか、全員、力まずに歌う感じ。特に出だしは5〜6割ぐらいの力でゆるゆると。しかし、まだまだ声に余裕があるのは一目瞭然である。喉が暖まってくるに従い、気持ちの盛りあがった拍子に、『…やっぱり ! (タダモノじゃない)』と思うような声を瞬間的に出したりするのだが、そこは大ベテランたち、行きっ放しにならずに元のラインに戻して余裕しゃくしゃく。後半だんだん盛り上がって、6〜7割の強さって感じでしょうか。お互いの調子を見ながらバランスを取り合ってる感じもよくわかりました。
 最後の最後まで、こんな感じでプロのアクトに徹しそうな気もするけど、もしかしてもしかして最終日には、誰か1人ぐらい後顧の憂いなく思いきり行っちゃったりしないだろうか(行くとしたらアノ人)。だとしたら、凄いだろうなぁ。う〜、気になる。横浜公演、見に行った人、誰か報告して。

 1つだけわがままを言えば(このショーを招聘していただいただけで感謝してますが、ホント)、やっぱり、もっと小さい小屋で見たかったな。『こんな広いクラブで歌うなんてことは普段ないんだけど…』みたいなことをビバリーがMCでちらっと言っていたが、このセット、小さいクラブで、コール&レスポンスがある中で見たらもっとしっくりくるだろうなぁ。なにせ、ホールということもあり客席はクール。ちょっとしたアドリブ的な発言とか挙動もあったりしても、じ〜っと黙って見て曲が終わるごとに拍手するだけなのはあまりに辛い。前回のSoul Survivorsに次いで、ステージからの問いかけに対して思わず大きな声で返事してしまいそうな自分を抑えるのがひと苦労でした。
Soul Survivios 2006
5月11日の2nd stage @ ブルーノート東京

すっばらしかったです !
今年のSoul Survivors、久々に良い音を聴いて興奮しちゃった。

Cornell Dupree(g)
Les McCann(key,vo)
Jerry Jemmott(b)
Buddy Williams(ds)
Ronnie Cuber(sax)


まずは何と言っても、Jerry Jemmott様のベースがバチバチで、
スゴイ、スゴイ、スゴイ。
そして音がムチャクチャ低い、低い、低い。
今時、こんな音で弾ける人はいないでしょう。
これだけでも、ホントに見に行ってよかった。興奮。
ベース・アンプの真正面の席だったこともあって、生音、120%堪能しました。
ノッて来た時の踊りも妙にグルーヴィーで笑える。顔を含めた全身で音楽してる。今後ベーシスト諸氏のネタになりそう。
南部の田舎のクラブそのままのたたずまいは、メンバーの中でもひときわ、時間の影響を全く受けてない感じでした。いや、前回、Bernerd Purdieさんとのシークレット・ライブを見た時のことを考えると、むしろ昔に戻ってるのかも。

Buddy Williamsとの取りあわせも良かったのかもしれないです。
タムの音が深くて印象的。これが、繊細でスリリングなスネア・ワークが真骨頂なPurdieさんとのコンビだったら、音楽がもうちょっと“楽な(=ゴツゴツしてない)”方向に進んじゃったかも、と内心思ったな。
そして、多分、このメンバーの中では“若者”なバディの真っ直ぐな気合いが良いバランスなのでしょう。
(終演後、タイコをばらしながら同国の友人とおぼしき人たちと会話してるのを盗み聞きしてたら、『なにしろ、世界のsuper starの大御所たちとだぜ。も〜大変。』と、ご本人もやや興奮気味の様子。)

Cornell Dupree様は、久々に見たら、めっきりお年を召した様子だったけど、例のテキサス系ペケペケギターなら、その力の抜けた感じでも問題なし。
チョーキングの音の伸びは年々少なくなっているけど、ブレイクした後の静寂の仕切りが絶妙。本当にブレス(歌で言うなら息継ぎ)を感じるギターです。
他の人のソロ中は、例によって居眠りしたり(?)、腕時計を見たり、ポケットから曲順表だして確認したりとマイペース。ま、お決まりの“余裕の”演技なんでしょうが、この演奏のグルーヴ感あってこそ。

Les McCann、脚が悪いようで、支えられての入退場ですが、ひとたびピアノの前に座れば、その瞬時のリフのスピード感が素晴らしい。
まだまだ、プレーがお若いです。現役、現役。
歌は初めて聴きましたが、想像してたのとは大違いのイナタさ。
声も若くて力強く、2曲歌ったけど、どちらの曲も大満足。



Ronnie Cuberのsaxはカバーする音域も広く、ブロウもなかなか。ただ、これだけクセモノなメンバーの中では、一番、端正な音楽という印象。
キング・カーティスと比べてもしょうがないですしね。
でもアップ曲の一瞬熱の入ったソロは良かったです。


**************

この日の1stステージでは、ひどいPAトラブルがあったせいか、なんだかピリッとしない演奏だったらしく、入替の時に出会った1stを見た人(ベーシスト)からは、『もしかして練習不足!?みたいな演奏だった…』なんて不穏な発言が。一瞬不安を覚えたのだが、2ndステージはもう文句なし。
レス・マッキャンの曲の、かなり凝ったシカケも緊張感の中、しっかりとクリアされてました(笑)。

ということで、明日(というより今日)12日(金) は大阪ブルーノート。
もちろん、音楽とはナマモノだとは思いますが、関西方面の皆様、
もし、まだ迷っている方がおられるなら、今回は絶対に行くべき、とお勧めしておきます。
AFTER THE RAIN / Irma Thomas (2006)
 待ちに待った久し振りのアーマ・トーマスの新譜 !
 手に取って、まずいつになく垢抜けたジャケット・デザインにドキドキ。何とまあ美しい美しいアーマ様。これまでのアルバム・ジャケットの中でベストかも。
 音を聴いてまたびっくり。これまた、今までのアルバムとは全く印象が違う。今までの印象と比較的近いのは#12、#13ぐらいで、それ以外はどれもこれもこれまで聴いたことのないような感じ。ひと言で言うならサウンドがシンプルで歌が際立って前に出るようになっている。80年代後半、古巣ニューオリンズに戻ってからのIrma Thomasといえば、ホーン・セクションが高らかに鳴るいかにもニューオリンズ・バンドらしい“おおらかな(時に大雑把な)”音の中でタフにのびのびと歌い、聴いている人にその元気を“感染”させる、というイメージが強かったのだが、今回のコレは、何と内省的な。これまでのアルバムでは、いつも広い屋外のステージで彼女の歌を聴いているような気がしていたが、今回のCDでは、同じ部屋の、すぐ隣に彼女がいて、1曲ごとに彼女の歌の世界に説得されているようである。

 タイトルはAfter The Rain。もちろん、昨年夏、ニューオリンズを直撃したハリケーン・カトリーナが思い起こされる。あの災害の時、彼女自身はオースティンでライブ中で幸いにも難を逃れたが、彼女の自宅および経営している店Lion's Denは壊滅。しかし、このアメリカ史上最悪ともいえる災害について、彼女自身はインタビューに答えて、『全てのものが水の下に浸っているのを見た瞬間から、私はカトリーナを振り返らないことにした。私はいつも物事のよい面を見るようにしているのよ。』と述べている。
 確かに、ほとんどの選曲はすでにカトリーナ以前になされていたということだし、今年はRounderに移籍して20周年という区切りの年でもあり、おそらく、元々、自分の歌についてじっくりと振り返るアルバムを作るという意味があったのかもしれない。ということで、それぞれの曲には、まだまだ大変であろう状況や色々な思いが反映されているだろうとは思うものの、私としては彼女のその前向きな気持ちを尊重しつつこのアルバムを聴きたいと思うのだ。

 さて、まず、サウンドの編成だが、なんとベースは全曲がアコースティック・ベースを採用。その他にも、土地柄から予想できなくはないサウンドではあったのだが、アコースティック・ギター、バンジョー、フィドルなどのアコースティック楽器の起用したアレンジは珍しい。#11はアコースティック・ギター+バンジョー+パーカッション、#3にいたっては、ベース+タンバリン+コーラスのみ。その他にも、ピアノ(オルガン)+ベース+ドラムの3〜4リズムの曲も多く、いたってシンプルなつくりだ。個人的には、全体通じてJames Singlesonのベースと合わせて、今回のドラマーStanton Mooreのスネアの音がかなり好き。特に#2、#7、#10などはアーマの歌声とよく合って気持ちがいい。

 また、選曲としては、今回はこれまでよりぐっと古い曲のカバーが多い。アーサー・アレクサンダー(ビートルズのAnnaの原曲の人)の#1、ドリフターズの#3、レイ・チャールズやクラレンス・カーターの歌った#8、ブラインド・ウィリー・ジョンソンによるカントリー・ブルースの#11とトラディショナルの#4、#7、Nina Simoneの#5。それ以外には、ピアニストとしても参加しているDavid Eaganの存在が特徴か。

 アルバムの前半は、重く深く抑えた歌が続くが、特に個人的に印象的なのは、ブルース・マンによっても数多くカバーされている#4。シンプルなリフレインながら歌のテーマがいつまでも耳の奥にぐるぐると残る。
 #7は唯一ハリケーン“後”に加えられたとのことで、トラディショナルに彼女自身が歌詞をつけたもの。この曲だけはまさに今回の出来事に対する彼女の個人的な哀歌なのであろうが、こちらもただの嘆きではない、言わば音楽によって災難を乗り越えていくというか、ニュー・オリンズらしい力強さがあって、いかにも彼女らしい。
 続く#8はアーマの歌声の何と若いこと。これが65歳の声とはね。Chess時代を思わせるほどの響きである。
 #9はこれまた聴いたことのないような小じゃれた(?)ジャズ・フレイバーの曲。しかも彼女がこういう歌詞を書くとは。何となく、恋愛に関してはストレートに気持ちを歌い上げる人だと思っていたのだが、自分の男(旦那 ? )に、『アンタ、いい加減にしてよ』と文句を垂れるこの感じは、ソウルというよりブルース寄りと言うべきか。これまでの中では珍しく下世話な世界じゃないでしょうか(笑)。しかも、今回のは“語り”入り。こんな風に男性に言うこともあるのかなぁ、と興味津々でした。
 #11は、イントロのギターが何やら聴き覚えのある音…と思ったらクレジットにCorey Harrisさんの名が。昨年、共演させていただいた時、間近でそのギターを見て、圧倒的に惹き込まれた時のことがまざまざとよみがえった。オープン・チューニングにつき、指使い、どうなってるの ? と必死に覗き込んだっけ。(そういえば、あの時、Coreyさんに『私もこの歌、歌いたいですッ』と言って歌詞を教えて頂いた曲がそのままになっちゃってた。いかん。) これもトラディショナルと並んで、印象に残る1曲。
 そして、エンディングの#13で、おなじみのDavid Torkanowskyによるピアノ1台で『I'll be your shelter in the rain』と歌う力強さは、彼女の存在そのもの。オリジナルのスティーヴィー・ワンダーが描いてみせた“やさしく慰撫してくれる”ようなシェルターとはまた違う種類のシェルターだ。嵐が来ようが何が来ようが、何があっても守ってくれそう。

 とにかく彼女の歌がもつ力というものがよくわかる。人として、一番、基本的でシンプルで大切なものが何かを教えてくれる歌だ。夜中に一人で落ち着いて聴くととことん打ちのめされるかも。
★★ 試聴可 : 写真をクリックして下さい ★★



1. The Midddle Of If All
2. Flowers
3. I Count The Tears
4. Make Me A Pallet On Your Floor 
5. I Wish I Knew How It Would Feed To Be Free
6. If You Knew How Much
7. Another Man Done Gone
8. Till I Can't Take It Anymore
9. These Honey Dos
10. Another Lonely Heart
11. Soul Of A Man
12. Stone Survivor
13. Shelter In The Rain



※追記
2007年2月11日、この『After The Rain』が
第49回グラミー Contemporary Blues Album部門の最優秀賞を受賞しました!
おめでとう!!!!!!!!!